相続税評価ー縄縮みのケース

 

縄縮みの土地をどう税務署に証明すべきでしょうか?

 

先日、相続税の財産評価をする際、縄縮みのケースに遭遇しました。

 

縄縮みとは、土地の登記簿上の面積が実測の面積より大きい場合に生じます。

土地の登記簿とは、登記所が発行するものであり、登記簿に記載されている面積は、公簿面積であるため正確なものと思われがちですが、実は異なるのが一般的です。

明治時代に測量技術が未熟な住民が、雨で縮んだ縄を使用したということからこのような名が付けられたそうです。

 

100㎡以上の縄縮み!!

 

今までの経験上、多少の縄伸び・縄縮みには慣れておりましたが、今回は100㎡以上の縄縮みでした。

大きな縄縮みは、何代も親族で相続を重ねてきた地方の地積規模の大きな土地で生じるケースが多いのです。

お客様から入手した公図、謄本、住宅メーカー測量図等を検討した結果、縄縮みが発覚したのですが、お客様はその事実を全くご存知なかったのです。

推測ですが、何代も前からご所有の土地とのことですので、近隣に分筆後、お客様の土地だけが大きいまま残ってしまったのではないかと思われます。

評価する上で、本当に縄縮みが生じているのかを確かめなければなりませんので、私自身簡易測量を致しましたが、その結果は住宅メーカー測量図とぴったり合い、確かに縄縮みがあることを確信しました。

 

どう評価する?

 

さて、相続税の財産評価通達8は、「地積は課税時期における実際の面積による」としており、実測の面積で土地を評価することになります。

本件は、実測面積が、公簿面積より少ないため、実測面積で申告することで、公簿面積で申告するケースに比べて、税額をかなり減らすことが出来ます。

気になるのは、実測面積が正しいことをどう税務署に納得してもらうかです。

今回入手出来た測量図は、10年以上前に住宅メーカーが作成したものだけであり、地積測量図もない土地でした。つまり、測量の専門家が作成した図面がないまま、100㎡以上も面積を減らすことは税務上、証拠不十分なのではないかと懸念されたのです(住宅メーカー図面の作成者名欄には有限会社名がかかれておりましたが、ネット検索しても出てこなかったため、存在自体不明でした)。

※注 相続税申告の際に必ず測量しなければならないわけではありません(国税庁HP質疑応答事例)。土地家屋調査士等の専門家に依頼すればお客様に測量費用等の負担がかかります。

しかし、大きな縄縮みのため、何かしらの裏付けが欲しいと思われました。

 

固定資産税課土地担当へ

 

そこで、区役所の固定資産課に相談することにしました。

固定資産税は、原則として登記簿上の公簿面積に基づいて評価されますが、固定資産評価基準第1章第1節二の2では、「登記簿に登記されている土地の現況の地積が登記簿に登記されている地積よりも大きいと認められ、かつ、登記簿に登記されている地積によることが著しく不適当であると認められる場合においては、当該土地の地積は、現況の地積によることができるものとする。」とされていることから、現在、公簿面積で課税されている固定資産税を実測面積に変更出来れば毎年の固定資産税の納税額を減らす事が出来ます。

さらに、その副次的効果として、区役所が公簿面積より100㎡以上減らした実測面積での評価を認めてくれれば税務署に対する強い証拠になります!!

 

結論

 

区役所の固定資産課税土地担当に相談し、様々な資料を見せて交渉したところ、こちらの話をご理解頂き、実測面積で評価することが出来ました。

お客さにとっても、今後、固定資産税が減ることはいい結果になったと思います。